まだまだ寒い日が続きますが、日によっては春のような暖かさも感じられるようになってきました。この季節、畜舎内でハエが飛んでいる姿を見ることは少ないと思いますが、畜舎周辺には越冬したウジやサナギが春に備えて潜んでいます。
・春のハエ対策の重要性
ハエの発生は、春から夏に向かって増加します。それは気温の上昇に伴い、卵から成虫になるサイクルが短くなるからです。このサイクルは気温20度以下では3週間以上かかりますが、気温30度では約1週間で成虫になります。そのため春先に成虫が少ないと油断していると、気が付けば大量発生していたということもしばしば起こります。一度大量に発生すると、その後の対策は難しく、労力も余計にかかってしまいます。シーズンを通してハエの発生を抑えるには、成虫が増え始める春をどのように乗り切るか?がポイントになります。特に発生源対策はハエ対策の「カナメ」ですので、2月、3月からしっかり対策を取られることをお勧めいたします。
・具体的な発生源対策発生源対策を効果的に行うには「環境整備」と「幼虫(ウジ)対策剤」の2つを組み合わせることが重要です。
①畜舎の環境整備
ハエはウジにとって水分と餌がある場所に産卵をします。家畜の糞尿が溜まった場所、こぼれた飼料、畜舎の隅、堆肥場などが主な発生源です。発生源となる場所の除糞や清掃、堆肥の攪拌など環境整備をすることで、ハエの発生を抑えることができます。できるだけこまめに除糞や清掃を行い、風通しを良くし、畜舎内を乾燥させた状態にしましょう。また堆肥場では、堆肥の発酵熱で卵やウジ、サナギは死滅するため、こちらもこまめに切り返しを行い全体的に十分な熱を加えることが重要です。気温の低いこの時期に除糞や清掃で、越冬しているウジ、サナギを排除し、数を減らしておくことはとても効果的です。
②幼虫対策剤
せっかく掃除をしても、集めた堆肥や敷料を積みっぱなしの状態では、場所が変わっただけでハエの発生源に変わりないです。このようなウジの生育場所(堆肥、牛床の周囲、糞便堆肥の取りこぼし箇所)へは、幼虫対策剤の散布をお勧めしております。一般的にウジやサナギは、飛んでいる成虫の約4~5倍も存在するといわれており、幼虫対策剤を散布することで効果的にハエの密度を低下させることができます。
散布する幼虫対策剤はIGR剤(Insect Growth Regulator=昆虫成長制御剤)がお勧めです。速効性はありませんが、効果期間が比較的長く、昆虫特有の生理的機能に作用する成分ですので、人間や家畜などの哺乳類への毒性が低いことが特長です。
IGR剤のご紹介
有効成分量:ピリプロキシフェン 0.5%
散布方法:粒剤もしくは水に希釈(50倍)して散布する。
散布量:20g/㎡(粒剤)、50倍希釈液 1L/㎡
サイクラーテSGの効果:幼虫期間に薬剤にあたると、サナギの状態で止まり、成虫になれずに死にます。サイクラーテSGは、食毒および接触によっても効果が発現するので、幼虫期間で最もながく、かつあまり摂食せずに動き回る3齢中後期のウジに効果的です。
幼虫対策剤の効果はすぐに現れるものではありませんが、用法用量通り定期的に使用していただければ、ハエの密度を低下させ、ピーク時の大発生などを防ぐことに繋がります。春から「環境整備」と「幼虫対策剤」をバランスよく組み合わせて、今年はハエの少ない、快適な1年にしていきましょう。