バイパスメイトLの養牛(乳牛、繁殖和牛)への給与について / 油化産業㈱

2021年4月20日

バイパスメイトLの養牛(乳牛、繁殖和牛)への給与について

 

油化産業㈱

アグロメデック事業部

 

酪農家の経営において繁殖管理が重要なことは今更ではありますが、どのくらい利益が上がるか具体的な数値はあまり目にする機会がないのではないでしょうか?分娩間隔が420日から400日まで1サイクル分の分娩間隔が減ったとします。そうすると、①分娩する子牛の増加と②牛群全体における低泌乳期間の乳牛割合が相対的に減ることによる平均乳量の増加によって増収となるわけです。

 

①子牛増収分 70万円

②乳量増加分 182万円

計    約250万円

 

この250万円は1人の作業員を雇用したりする程度のレベルではないでしょうか?

また、逆に様々な要因(発情見逃しや排卵障害等)により、1サイクル遅らせたりすると逆に250万円もの減収となってしまいます。これでは先ほどとは逆に作業員を1人解雇しなければなりません。このことを考えると繁殖が経営の基礎を担っていることが良く分かります。黒毛和種繁殖農家様の場合は上記の②がない代わりに① の部分の係数が子牛価格を単純に50万円/頭とすると酪農での収入の3倍となります。

ここで繁殖サイクルとは何かを再度考えてみますと

分娩、後産排出、悪露排出、子宮回復、発情回帰、排卵、初回種付け、黄体形成、受胎確認、次回分娩と流れ、卵巣に限っては下図のようなサイクルとなり黄体形成までスムーズに流れることが鍵となっていることが分かります。

これがスムーズに行かない原因には以下の要因が考えられ、乳牛の場合は何世代にも渡って、乳量や乳成分等の生産性第一に改良されたために、分娩直後の泌乳量に見合ったエネルギーを賄うだけの飼料摂取ができないこととなっております。これが全ての諸悪の始まりで、授精適期とされている時期の卵子は実は原始卵胞が分娩前から育ち始めているのです。そのことから、なぜクローズアップ期からの栄養管理を大事にしないといけないかという理由がわかるでしょう。

また、卵胞発育と排卵に限定すると、性ホルモンが深く関わっており、その性ホルモンには当然ながら栄養状態が深く関わっております。

高濃度のエネルギー飼料であるバイパス油脂(脂肪酸カルシウムや硬化脂肪酸)は反芻胃で分解されず吸収できる油脂量が多く、吸収されることで血漿中のコレステロールが上昇します。これがエストロゲン上昇につながり、よりLHサージも高くなる。これが卵胞成熟を促進し排卵を促します。

実は、リノール酸が豊富な脂肪酸カルシウムでは更に以下の働きが期待できるのです。

リノール酸は吸収された後アラキドン酸を経てPGF2αに変換されることが推測されます。

よって、単純なエネルギー給与よりも発情を到来させる飼料として利用できます。過去の農業新聞に取り上げられた西貝博士の記事もあります。

更に、米国大学の研究から魚油を給与した結果早期胚芽死に関わる初期胚の死滅も予防できる効果があり、特にα-リノレン酸がインターフェロン⁻τと協調して流産してしまうことを防いだりします。

分かりやすく記述すると

種付け前 ⇒ リノール酸 (バイパスメイトL)⇒ 発情来させる

種付け後 ⇒ α-リノレン酸(ファインメイト)⇒ 妊娠維持(流れない)

ここで、そういえばリノール酸であれば、大豆に入っているため、「大豆粕」が配合飼料にも多く使われているから良いのではと思われているかもしれません。「大豆粕」は大豆から油を搾った粕ですのでリノール酸はほぼ残っていません。では、全粒大豆もしくは加熱大豆には、どうでしょうか?

飼料原料中の吸収リノール酸量(リノール酸含量ではない)を比較している表があります。これを見ると

加熱大豆      16.3g/kg

バイパスメイトL  195.0g/kg

吸収リノール酸濃度が高いため、余分な蛋白質や余分な繊維分が入り込まず繁殖に必要な吸収リノール酸だけを効率的に食べさせることが可能となります

乳牛向けの注意点

バイパスメイトLは脂肪酸カルシウムであるため、夏場にストレスを受けた状態の繁殖には上手く対応してくれるのですが、乳成分のペナルティギリギリまで低下したときに乳成分(特に乳脂肪率)を上昇してくれるか?という質問を多く受けます。正直なところあまりプラスには働きません

下記表にも記載されるように『その他脂肪酸』というカテゴリーに入ると考えられ、乳脂肪量は増加しても、乳脂肪率はマイナスを示します。特に夏季のルーメンアシドーシス状況ではその状態がより助長される傾向があります。

そこで、当社では下記のように3階建てで対応しております。

乳量⇒ネオファット-MA(パーム油脂肪酸カルシウム)

繁殖⇒バイパスメイトL(大豆、菜種油脂肪酸カルシウム)

乳脂肪⇒デイリーパル98(飽和脂肪酸)

必要、用途に応じて分別給与をすることを推奨致します。

元祖脂肪酸カルシウム「ネオファット-MA」は乳量を伸ばすために使用できます。すると乳生産が伸びて繁殖までエネルギーが廻らないことで繁殖成績が落ちているとすると、繁殖のために「バイパスメイトLまたはバイパスメイトプラスM」でリノール酸を供給します。そんな時、苛烈な暑熱ストレスにより乳脂肪のペナルティを科せられる程になると、「デイリーパル98」で乳脂肪率をUPさせることができます。

モデルとなる飼養形態に当てはまらない場合は、牧場主様が何を望まれているかを主体に考えれば良いと思います。乳量、繁殖成績、乳成分?不足する物に合わせた給与ができます。

最後に

必要な栄養成分を補うために、様々な飼料や飼料添加物が世に出回っております。実はその中でも繁殖を向上させることができる可能性のあるものが最も給餌効果が高いことが言われております。今一度、溢れた添加剤関係が本当に必要かどうかを整理して本当に必要なものが何かを検討され、経済的な効率を上げましょう。

 

 

以上