中村菊枝牧場は栃木県北部大田原市白鳥飛来地で有名な琵琶池の程近くの閑静な場所にあります。中村牧場は現在繁殖母牛50頭、子牛は約40頭/年で矢板家畜市場へ全頭出荷しております。労働力は主に娘さん(さおりさん)、さおりさんの旦那さんの2名でお父様は15年前に亡くなられ、1~2年前に菊枝さんからさおりさん夫婦へ経営移譲されました。
中村牧場はその施設が非常にユニークであります。2枚目の写真を見ていただくと屋根の形状が特徴的だと思います。これは建築されるときに太陽の向きに合わせて屋根の向きを配置して暑熱時太陽が真上にある場合は陰になるように、冬場は斜めから太陽光がさして暖かくし寝床が乾くよう工夫されています。屋根末端には樋があり雨水が流れ込まないようにしてあります。天井も高く換気が非常によいです。
牛舎が傾斜地最下部に配置され、地下サイロのサイレージと自家配合穀類、ヘイキューブ等粗飼料が混合されたかたちでベルトコンベヤーで運ばれ上から給餌車に入るようになっております。動線が良く考えられたつくりになっています。
配合割合は写真の制御盤でコントロール出来ます。牛舎も含めこの先進的なシステム導入は国の事業で行ったそうです。農林水産省畜産草地研究所(現在の国立研究開発法人農業・食品産業技術研究機構那須塩原事業場)の技術指導のもと約40年前に建築されました。
牛舎内部の施設も非常に工夫され乳牛のフリーストールを思わせるようなつくりになっていることがわかると思います。和牛繁殖牛舎にしては非常に開放感があり、牛ものびのびとリラックスしております。子牛と親牛を別々に管理できるように子牛だけが移動できる小窓が設置してありました。
自給粗飼料はイタリアンライグラスを4~5ha 年3回収穫し、稲作はやっていないのでワラは堆肥と交換に近隣から入手しています。
哺乳子牛は別棟にあり離乳までここで管理します。早期離乳で粉ミルクをお湯で溶かしますが写真の電熱器?を水バケツに入れ沸かすことでお湯にしています。そのほうが効率的だそうです。哺乳舎にはサシバエ捕獲器も設置されていました。
お父様の代からアイデア満載の飼養管理をされ今も工夫しながら継承されていると感じました。先進的な技術を貪欲に取り入れた印象的な牧場だと思いました。