とちぎ和牛を考える会 若手の会和牛 敷島ファーム視察報告 

とちぎ和牛を考える会 若手の会和牛 敷島ファーム視察報告 

和牛ゲノムは農家の生産性を高めるのか? 

当会の若手の会で、那須町の敷島ファームを視察してきました。日本で最も和牛ゲノム(G-Eva)を活用しているといわれる農場で、その活用方法と効果について聞いてきました!

 和牛ゲノミックの活用の効果

1.)  牛の能力の見える化(プラスを伸ばす)
2.)  リスク因子の排除(マイナスをなくす)
3.)  出荷成績の向上と安定(結果の平均が良くなる)
1.)  能力の見える化で、能力をバランスよく高める

母牛の能力(個体の遺伝的特徴)を知ることで、欠点をカバーする種雄牛を選定する。改良をコントロールすることで成績の良い牛ばかりで結果が安定していく。

2.)  リスク因子を避ければトラブルが減る

まず、遺伝病を持っている牛は繁殖に使わない。さらに未確定の遺伝的リスクも避ける。例えばSD(骨格粗大症)はリスクのある遺伝素因として把握している。敷島ファームでの死亡子牛の約半数がSDを保有していたので、SD保有の母牛も種雄牛も使用しない。分娩事故は現場の士気が下がる。また後継を残さないと判断した親牛には雄性判別を使用する。

3.)  ゲノムによる改良の結果
① 改良前の2017年のゲノム評価値は、BMS、推定歩留まり、ロース芯面積のどれもDが75%を占める状態。2018年時点での出荷枝肉の評価は皮下脂肪厚以外すべてCDの割合が50%で、BMSは約75%が全国平均以下であった。
② 2018年から改良して2023~2025年には6形質すべてでHとAが約50%と劇的な変化を遂げた。
③ 改良の結果、どんどん増体が早くなったので、出荷体重を大きくするのではなく出荷の短縮に挑戦してきた。現在26ヶ月齢出荷で30ヶ月と同じ成績で、最近は22ヶ月齢出荷の実験中。26カ月と大きな差がなくなってきている。ゲノム改良によって、出荷の枝重や評価は変わらず、短期間で到達する分、大幅なコスト削減が実現している。
4.)  種雄牛選びの考え方
① 使う精液は基本的に事業団で、現在の種雄牛は遺伝的に優秀なので、ほとんどの場合は母牛よりもゲノムの高い子牛が生まれてくる。母牛のゲノムよりも種雄牛選びが重要。
② 母牛の改良が進んでいるためETせず、97%がAI。
③ 母牛のゲノム分析から、欠点を補完するように(6角形のバランスが良くなるように)種雄牛を選ぶ。

例:福之鶴の6角形

④ 出生時体重を重視:ADG(日平均増体)が高いが生時体重は大きくない組み合わせは大事。とくに初産と2産目まで。
⑤ 性判別を積極的に使い、オス7:メス3の比率で産ませている。3割の雌からさらにゲノムで選抜をかけて後継牛を選ぶ。
⑥ 近交係数より事業団の提供している「遺伝的距離」で近づきすぎない掛け合わせを確認。今のところ、改良で想定外の悪影響は出ていない。
5.)  繁殖農家がゲノムを活かすために
① 種雄牛の選定
1.)  悩むことなく、繁殖素牛として残す牛の選別が可能になる。(もしかすると、とても能力の高い雌牛を販売している可能性も…)
2.)  残すべき後継牛を絞れば、それ以外は積極的に性判別を使用すると、生まれてくる雄の比率が増えるので、販売価格を向上させられる。
② ADGの向上

枝重を改良していけば自然と素牛出荷時の体重も大きくなる。

③ 採卵の効率化

能力を把握したうえで実施する事で無駄なく能力の高い可能性のある受精卵を生産できる

④ 購買者からの信頼

農場全体的に能力の高い子牛を生産する事で将来的に肥育農家から喜ばれ、安定的に子牛の購入をしてもらえる可能性が高まる。

⑤ ルール変更への対応

本宮市場、渋川市場などがゲノム情報開示へ舵を切っているので、矢板市場も開示する流れになった時のために、ゲノム改良は先んじて進めておく方が良いかもしれない。

⑥ 改良していくと母牛の能力が高まるので、経産肥育の成績がとても良くなる

【農場視察】

敷島ファームは黒毛和牛一貫生産の畜産事業を中心に、企業内耕畜連携型の農園事業、食肉加工・販売からホテル、レストランなど幅広く手掛ける、那須に本社をおく多角的畜産企業です。

数字で見る敷島ファーム

飼養頭数:黒毛和牛約11,000頭(繁殖5,300頭、子牛2,300頭、肥育3,400頭)
年間枝肉出荷:約2,500頭(うち輸出向け508頭)
月に250頭分娩で基本的に親付け(乳の出ない初産の子は人工哺乳)
基本的に6産で世代交代(成績の良い牛で9産くらいまで)
発情発見は目視のみで分娩間隔12,3カ月、分娩も牛温計なしで夜勤一人
出荷までの事故率2~3%

 印象的だったのは2つです。1つ目は、母牛を一番大切にしていること。2つ目は、ルールを徹底して誰がやっても成績が安定する仕組みを作っていることです。

 

母牛を大事に、子牛を丁寧に

健康な子牛を産み、健全に哺乳してもらうために母牛の管理に手をかけていました。分娩には母牛に粗飼料を飽食させ、個体ごとの情報を細かく把握して対処しており、牛が多いからこそ基本に忠実に管理をしていました。

 

ルールの徹底

例えば「流産・死産・生後間もない死亡が2産続いた親牛は繁殖除外」などです。これはまだわかっていない遺伝疾患を持っている可能性があると考え、牛群に遺伝子を残さないという判断です。

 他にも多くのマニュアルが見えるところに掲示されていました。マニュアルはその場ですぐに確認できるようになっていることが大事です!

 下痢の対応

親付けは基本24時間自由に子牛が親のところへ行けるようになっています。下痢をした場合は朝夕1時間ずつの制限親付けとして、必要に応じて経口薬や点滴などの対応。週に3回の管理獣医師による巡回があるため、現場の状況をきめ細かくやり取りして、現場での処置と獣医師による診療で重症化することはとても少ないようです。

子牛だけが通れるスキマ

 子牛エリアの敷料

 子牛エリアの敷料はオガクズの週一回の交換で、親牛が子牛エリアに入れないためあまり汚れない。