〝福勝鶴〟を輩出した那須町 高久正人さんを取材しました。

今回は1月末、雪の舞う極寒のなか〝福勝鶴〟の母牛を輩出した那須町の高久正人(たかくまさと)さんを取材しました。公開が遅くなり毎回すみません。ご存知の方が多いとは思いますが家畜改良事業団では貴隼桜をはじめとしたゲノミック育種価による種雄牛選抜を行っておりますがその中で現状においては一番評価が高く、“スーパー種雄牛”とされた我が栃木県大田原市(旧湯津上村)から排出された「福之姫」を父に持つ種雄牛となります。ポスト『福之姫』の最有力候補で間違いないと思われます。全国的に人気が高く品薄で入手困難な状況です。福之姫に続いて栃木県から排出されたことを誇らしく思います。

写真が高久正人さんです。高久牧場では繁殖母牛42頭、哺乳子牛7~10頭 知り合いの酪農家に借り腹を年に8頭程度 全頭早期離乳(3日間)で人工哺乳~3か月齢 借り腹は分娩当日に引き取るそうです。移植料は酪農家持ちで借り腹料金は相場変動制で矢板市場の3か月間の雄雌平均の29%としており1月時点では約16万(税込み)程度となります。疾病予防として人工初乳を2袋給与しています。母牛、育成牛にはβカロテン入りのビタミンを使用しています。(べタカロンP:ZENOAQ)

受精する種雄牛は経産牛には福勝鶴、未経産牛には生まれが小さい福之姫、北美津久、百合未来を使用しています。

正人さんは大学卒業後、就農され25頭だった母牛を増頭する目的で岩手県から日本短角種を8頭導入し短角種に和牛受精卵を移植していき母牛35頭まで増やしていきました。

令和2年の補助事業で2年間で6頭増頭し現在の母牛頭数に至っています。また近隣の仲間数名でシェパード家畜診療所に依頼して定期的にOPU-IVFで体外受精卵を作成しています。毎回牛の頭数を揃えるが大変だと伺いました。OPUは猛暑、寒さを避けて分娩後1か月程度で実施します。連続して行うと石灰化して採卵しても取れなくなるので注意が必要と伺いました。培養し胚盤胞まで卵割して戻ってくる受精卵は牛によってバラツキがあり10~50%だそうです。

飼料作物、田畑は借地3町歩含めて米1町歩、WCS4町、イタリアンライグラス2町X2回/年、オーチャード3町(永年牧草)、その他白ヒエ(雑草)また草地更新は7~8年に1回行うそうです。

福勝鶴の母親あつた223(改名前:まゆみ号) は安福久 X 勝忠平で18年前矢板市場を経由し群馬県の吾妻にある県の試験場に購入され、福之姫交配後種雄牛に選抜されました。種雄牛としてデビューする前に家畜改良事業団が2匹目のどじょうを狙いに正人さんの農場を訪れてヒントを出したことから気が付いて耳標番号をトレースしたところ自分の牛であることが判明したそうです。普通は親牛の名前が変更されていたので気が付きませんよね?たまたま、まゆみ号の子孫も頭数全体のおおよそ1/3~1/4は農場にいますが残っていて良かったですね。事業団も種雄牛選抜でないので連絡する必要がないのかもしれませんが早めに分かっていればもっと子孫を残した可能性もあるので不親切だと個人的に思いました。

最後に改めて栃木県は優秀な母牛を保有しており大事な財産なので県内から今後も種雄牛を輩出したいことからゲノム等のデータバンクを県内で共有し優良雌牛は是非県内保有してもらいたいと思いました。

正人さん、寒い中取材協力していただき感謝申し上げます。