今回も県北地区で那須町大森実季(おおもりみき)さんを取材しました。この1週間は春嵐で雨の多い印象ですが当日は表紙のように穏やかに晴れて心地よい風が吹いておりました。ここ那須町藤塩地区では例年よりはやや遅い桜が開花し始めています。
実季さんは1度就職され会社員をされていましたが2017年に就農し今年で8年目になります。実季さんで3代目になり祖父母の代は酪農をされていたそうです。2017年当時は牛の価格が絶好調で期待値が大きかったようですが現在は・・・といった感じです。牛飼いは主にお母様がされていて手伝いをしているうちにいつの間にか継いでしまったそうですが牛への接し方を見た限りでは元々牛が好きなんだろうと感じました。
親牛16頭、子牛6頭 牛舎+パドック(屋外)林間にパドックがあるお陰で真夏の猛暑にも影が多く冷涼な環境にあります。扇風機など必要ない環境です。冬場でも外に出して大雪や大雨以外は屋外だそうです。分娩直後~1か月は親子同居それ以外は他の牛と同居します。子牛が他の寛容な親の乳を飲む場合もあるそうです。増し飼いは分娩1.5~1か月前から分娩後2か月でピーク配合飼料4kgで維持期で2kgと寒冷地であることや粗飼料との組み合わせ、乳量もありますが少し多めと感じました。離乳は4か月~5か月齢で離乳するまでスターター給与し離乳後育成飼料へ切り替えます。
木が生えている場所がやや小高くなっており地面が乾燥しています。この日はまだ肌寒いせいか牛は日向を好んでいた様子です。牛と人間の関係が良好であるせいか牛がこちら側に直ぐに寄ってきます。寄ってくると除角していないので迫力あります。
獣医師による妊娠鑑定をしなくても子牛と同居しているので発情すると陰部の匂いを嗅いで騒いで発見してくれるそうです。ワクチン接種は冬場にTSV3を子牛に使用するのみで飼養管理がキッチリ出来ていれば病気の心配は要らないのだと感じました。自給粗飼料はイタリアンライグラスを2町歩X年3回約ロール150個、稲わら約200個 イタリアンサイレージ2番草~3番草、稲わらしか粗飼料がない場合は栄養がないので少し配合飼料を足して補っています。屋外で見るせいか牛がピカピカして毛艶が良いと感じましたが牛舎で見ても同じで他の農場より比較的BCSが高く、肋の張りが良いという印象でした。粗飼料をしっかりと食い込ませていると感じました。全体的にBCSが揃っておりほぼ年1産出来ているので個体管理が行き届いていると感じました。3代祖に藤吉系が入っているので前躯がしっかりして胸の幅があるのだとまつなが先生は仰っておられました。
丁度一番人懐っこい母牛が独房にいて撫でて欲しいと首を出してきました。肋張りは見事です‼ これだけ食わせていても難産はたまにはあるそうで血統の組み合わせには気を遣っています。母牛の血統は諒太郎、安福久中心で外部導入はなく自家産です。美国桜が欲しいが全体的に雄がほとんどで雌がなかなか生まれないみたいです。昨年は11/15が雄でした。ユニークなのは素牛に残そうと思う牛を矢板市場のセリに出して評価を確認して自己取りをすることです。何故か?経験がないため自己判断出来ず1回セリで評価してもらった方が良いという判断みたいです。牛の減価償却費を吊り上げている訳ではありません。最近は北美津久、大百合、福之姫を中心にAIで使用しています。また定期的に採卵を行い血統の悪い牛や血統が古くなり老齢になった牛をレシピエントにしています。
子牛の使用管理で気を付けている点は牛床が常に乾燥していることと写真のように横臥させて反芻させることです。こちらではもみ殻を利用していました。
取材の帰り際には餌の時間なのか牛が続々と牛舎に戻り始めていました。
最後に写真で分かりづらいですが牛舎の端に監視カメラが設置してあります。分娩監視には直腸の温度変化で監視する牛〇計等がありますが分娩が近づくと牛が神経質になり人が近くにいると分娩を開始しない場合が多く分娩介助が必要な場合に直ぐに駆けつけるように設置したそうです。また明るさにも神経質で夜中に電気をつけっぱなしでも同様の傾向があるそうです。知りませんでした。こういった細かな観察や気遣いは女性ならではと感心しました。今後はもう少し増築増頭を考えている様子でしたが牛の価格の問題や建設費増大で躊躇しているみたいです。県職および市町村畜産担当者の方々はよい補助金等がありましたら是非アドバイスを宜しくお願い致します。