前田公一牧場(那須塩原市寺子)を取材しました。(今年の会長です)

今回は栃木県北部で那珂川と余笹川に挟まれた那須塩原市寺子地区にあります前田公一牧場に取材に伺いました。前田さんは第36回とちぎの和牛を考える会 会長に推薦されました。

毎月矢板家畜市場開催前に優良雌牛を選抜する共励会が開催されますが、前田さんの牛は常連で見ない月がないくらいです。(受賞して襷のかかった出品牛)それだけ血統だけでなく育成技術も高いので発育の良い繁殖素牛をつくれるのだと思います。(前田公一さんを知らない人はいないと思います)

事務所でお話を伺いましたが賞状、トロフィー、楯が所狭しと飾ってありました。

また繁殖ボードも整理整頓されて一目でわかるように几帳面に記載されておりました。親戚の斎藤正吉さんは公一さんは農大生のころから牛に明るく熱心な印象があると仰っていました。

農場概要:

経産牛46頭、後継牛5頭、子牛37頭 人工授精だけでなく移植も全体の1/3位の頭数は行っています。(血統が古い牛中心)採卵はOPUも含め3~4回/年実施しており改良にも熱心です。現在注目している血統は北美津久、福之鶴、幸男 そしてゲノムが高く前評判の高い“福勝鶴”等です。栃木県民として福之姫の後継が栃木県からではなく2頭連続で群馬県の試験場から出るのは悔しいところです。

飼養管理:

母子分離は分娩後10日で早期に行い、それから人工哺乳を行い~約100日齢で離乳します。早期母子分離する目的は主には繁殖性向上と子牛のトラブル防止のため。母子分離を早期に行うようになってからは事故が激減し現在ではほぼゼロだそうです。

素牛は自家保留がほとんどでそれ以外は矢板家畜市場から導入しています。導入する牛の条件は体格体型で体積があり均称のとれた牛、将来82点以上が見込める牛だそうです。

親は妊娠末期(お産の約1ヶ月前)に分娩舎(独房)に移動し、約10日で母子分離後3週間以降に群飼いに戻されます。写真のように藁がふんだんに敷き詰められて床が常に乾いた状態、清潔にさせるのがポイントだそうです。母子分離が早いので発情回帰も比較的早いですが分娩後50日以内の発情は見逃して繁殖カレンダーに記録し約50日~90日に受精あるいは移植するようにしています。黄体確認は移植時に行います。妊娠鑑定は獣医師に依頼し約60日です。

自給粗飼料はイタリアンライグラス、デントコーン合わせて16町歩 9町歩デントコーン5月~6月播種8月~9月収穫→イタリアンライグラス10月播種5月収穫 デントコーン4月播種8月収穫→8月収穫 8月~9月収穫スピード燕麦播種→11月収穫 残り7町歩は春蒔イタリアンライグラス デントコーン含めすべてラップロールにします。春蒔の理由は一人で仕事が間に合わないからだそうです。

 

写真のスロープのついた通路は牛舎から離れた放牧場へつながっていますが当日猛暑のなか涼しいはずの放牧場には牛が移動せず影にも入らず日向に牛がおりました。(暑そうでした)

子牛の飼料給与体系ですが哺乳は強化哺乳はせず4L上限で90~100日齢離乳、スターターは約1ヶ月齢から開始し離乳時に2.5kg程度で離乳時にスターターは止めずに200gづつ減らして6日で育成飼料に完全移行させます。衛生管理として生後約1ヶ月齢、移動時の4ヶ月齢にコクシジウム症対策でトルトラズリル製剤を2回経口投与、移動時の4ヶ月齢にイベルメクチン製剤(プアオン)を1回投与 哺乳時に下痢予防で宮入菌製剤をミルクに溶かして不断給与 粗飼料は自家産イタリアンとドライTMR(粗飼料のみ)子牛に幅と深みを持たせるために濃厚飼料4kgに対し粗飼料は5kg以上(乾物)を基準にしています。その他稲わら、燕麦を給与 親の飼料体系はデントコーンサイレージを一律4kg給与その他配合飼料は増し飼いでお産2か月前1kgから徐々に増量し3~4kg  人工受精時には2~3kg その後妊娠鑑定後~1kgまで落とす。粗飼料はイタリアンロール、稲わら、燕麦を給与 親にデントコーンサイレージを給与しており外見的なBCSはやや高めですが獣医師の直腸検査時に生殖器へ脂が乗らないように意見を聞きながらコントロール出来ています。

比較的新しい牛舎は7年前に自己資金で建てた哺育育成舎です。機械で除糞掃除し易いように設計されております。天井が高く、換気が良いことが分かります。こちらもおが屑が床にしっかり敷き詰められており清潔であることがわかります。

繁殖ボードを見て分かる人は気になっていると思いますが15年以上前に高額落札で話題になった松本一さんから購入した第一花国(美国桜と兄弟)の子(安平照)が現役です。すでに10産し連産性に富み採卵してもAランクが沢山取れるみたいです。優秀ですね。

現在ゲノムはやっていないそうですが親の推定育種価や血統、体格体型以外に繁殖性に富む牛を選抜して後継牛にしているそうです。

現在多頭飼いで自給粗飼料面積の多い中、公一さんは人一倍頑張っていますが約4年後には息子さんが農大卒業後継がれる予定で将来は今より楽になれそうですし楽しみなのでもう少し辛抱ですね。

今年のとちぎの和牛を考える会開催も大変ですが宜しくお願い致します。