地域期待の新人現る/寺崎文明(てらさきふみあき)、寺崎康人(やすと)那須塩原市

県北那須塩原市にもやっと桜が咲き始めました。しかし、まだ肌寒いです。

表紙の右側が寺崎文明さん、左側が息子さんの寺崎康人君です。当日はあいにくの雨天で良い写真撮影が出来ませんでしたが新築ピカピカ✨牛舎です。昨年6月に引き渡しされたばかりです。文明さんは農協トラクターCM youtube動画に続く2回目の登場になります。

1次産業全体に言えることですが後継者不足が深刻な状況のなかよく後を継いでくれました。(感謝)

康人君は就農して今年で3年目になります。近隣には以前ご紹介しました那須塩原子牛研究会に所属している同世代の古谷光弘君、髙野慎吾君、木澤裕明君などと共に農協、県職の方々と毎月市場で体測するなど日々切磋琢磨しております。またゲノム活用で改良に熱心な豊田勝保さんとも交流があります。残念ながらコロナ禍で会合や行動制限されている状況ですが目下鹿児島全共に向け仲間と頑張っています。

茨城県の名門鯉渕学園を卒業、北海道帯広市池田町で実習後実家に就農しました。何故北海道かと言いますと以前康人君が学生時代に酪農学園大学大塚浩通教授バーンミーティング(農場現場研修会)に感銘し教授から北海道の実家で実習しないか?と誘われたことがきっかけだそうです。大塚教授の実家では和牛飼養頭数も多く、牛温計(ぎゅうおんけい)/分娩感知センサー等IT活用、山林放牧など刺激が多かったみたいです。

寺崎牧場の飼養頭数は親30頭、後継牛6頭の規模ですが近い将来親40頭が目標です。

粗飼料畑は10町歩(借地含め)で秋播きイタリアンライグラス5月上旬ロール約200本→グリーンミレット8月中旬ロール約100本(稗)→燕麦(2町歩)11月ロール約40本、10月WCS(稲ホールクロップサイレージ)2町歩ロール約100本と哺乳子牛のみ輸入乾牧草少量購入するのみで粗飼料の大部分を自給で賄っております。配合飼料はJA東日本くみあい飼料から購入しております。

上の写真は牛舎内部、外部です。2か所ともタンク(水槽)が気になりませんか?これは那須疎水をここに貯めて上からウォーターカップに供給するためです。こうすることで県北部で冬場の配管凍結の心配がなくなると同時にタコ足配管で水量が一定に保てます。水質は定期的に検査しているそうです。

飼養管理に関して牛舎は大きく2か所に分かれており受胎した牛は写真の牛舎に別の親牛と群飼し、お産が近くなったら別棟に移動し分娩後子牛の大きさを見て3ヶ月~4ヶ月齢で離乳し母子分離前に受胎させ妊娠鑑定後別棟で群飼するといったサイクルです。群飼は写真のように外のパドックとつながっており自由に行き来できます。取材日は雨が降って寒かったため全頭牛舎内におりました。

子牛は出荷するまで1マス同世代を2頭~3頭づつ群飼して競い食いさせ大きくします。敷料は主に籾殻を利用します。牛の導入、衛生管理面においても牛白血病フリーを目指しております。

血統に関して親牛は約20%が自家産でその他は導入で安福久、福之姫、百合茂、隆之国(すべて祖父安福久)、白鵬85の3(鳥取県)、華春福(鹿児島)、秀幸福(鹿児島)など気高系が多い印象です。種は家畜改良事業団中心で福之姫、百合美等平準化事業にも参加しております。

和牛牛舎には珍しく天井も高く、換気扇が設置されております。写真では分かり辛いですが換気扇中央部に金属のバーがあり猛暑時には温度センサーを調整しミストが出る仕組みになっております。風圧で円の中心部からミストが噴き出す効率的な暑熱対策になります。大塚浩通教授バーンミーティングの成果からカウコンフォートの考えられた牛舎構造になっています。

最後にコロナ禍で物価上昇が著しく和牛に限らず畜産農家生産コストは限界を迎えており輸入飼料に頼らない経営が望まれています。飼料だけでなく牛舎資材やトラクター燃料代、ラップ代、衛生資材等々全て値上がりしています。この地域では戦後コメの生産調整が始まってから和牛繁殖と兼業する方がほとんどです。皆で知恵を出し合ってこの難局を乗り越えて康人君のような若い生産者が将来に対し希望を持てるようにしなくてはならないと感じました。

康人君頑張ってね ‼