秋元一繁(あきもとかずしげ)牧場 / 那須町 を取材しました。

今回は栃木県北那須町秋元一繁牧場を取材しました。写真は一繁さんと娘さんの優花(ゆうか)さんです。父親が早く亡くなられたため(享年60歳)一繁さんは若い頃から大変苦労して牛飼いを継続してきました。祖父の勘蔵(かんぞう)さんは矢板家畜市場で平均価格が当時約30万のころ約170万で導入した第7糸桜に茂重波を交配し約155万4千円で販売したことのある有名な牛飼いで父親は土建業と牛飼いを両立させて経営されていたそうです。生前父親がよく口にしていたことばで人生“手習いは坂に車を押すが如し” という格言がありますがこれは、学問は少し油断するともとへ戻ってしまうから、絶えず努力しなくてはいけないというたとえで転じて初心が大事で互いを助け合うことが必要であると一繁さんに教えてきたと伺いました。現在優花さんは父親と一緒に牛飼いをしています。苦労している父親の背中をみて幼少の頃から牛舎で父親の手伝いを自主的に行ってきたそうです。農大に入学し父親の後を継ぐことも自らの意思で幼少の頃から決めていたそうです。

秋元牧場では25年前に経産牛22頭から始め現在60頭飼養しています。60頭のうち約半分は受精卵移植用で良血統約20頭の母牛から年7~8回採卵し40~60卵取ります。現在はF1(交雑種)子牛を導入し2回BLV検査を行い、牛白血病フリーを確認して移植に利用しています。写真は広いパドックで発情発見に最適です。隣は直ぐ那珂川で素晴らしい景観です。

採卵で使用する血統は流行のものを使用し美国桜、安福久などをドナー牛で用い種雄牛は近交系数を考えながら福之姫、幸紀雄、百合白清2等を使用しています。那須町という地域柄“もとじろうファミリー”を所有していることも特徴です。

飼養管理に関しては治療を減らすため予防中心で母牛には分娩前下痢5種不活化ワクチン接種、子牛には生後、初乳+人工初乳(抗体入)、鉄剤+ビタミンE投与、1週間後にTSV3(鼻腔内噴射呼吸器病3種混合ワクチン)、バイコックス投与(コクシジウム症予防)、2ヶ月齢アイボメックトピカル塗布(内部外部寄生虫駆除)と徹底しています。

一繁さんの恩師である元那須拓陽高校教頭の斎藤達夫先生が時々訪問しアドバイスしてくださるそうで先生から紹介された繁殖改善のための人参サイレージ(βカロテン)、子牛胸腺(リンパ節)を大きくする(健全化)する目的で親牛分娩前2ヶ月前~バイパスタンパク、セレンを給与しています。その効果もあり分娩後事故は低減したそうです。

また地元牛飼い、JA青年部、4Hクラブでは共同で出荷作業を手伝ったりして切磋琢磨しています。“農業は楽しくやりたい”が一繁さんのモットーで拓陽高校、県農大の恩師、県職の方々、斎藤達夫先生あるいは友人、仲間との出会いに常に感謝しながら牛飼いをしているそうです。

最後に取材を通じて一繁さんの温かい人柄がよく表れていたと感じた1日でした。