湯津上村から日本一の牛をつくる / 清水芳夫牧場を取材しました。

今回は栃木県和牛改良協議会長を長年務められている清水芳夫牧場を取材しましたのでご紹介いたします。清水さんは長年とちぎの和牛改良に尽力され業界で知らない人はいないと思います。写真にあります通り全共も岩手2区、岐阜2区、鳥取2区、長崎(補欠)、宮城3区で代表になりました。鹿児島全共以降は息子さんに委ねる意向だそうです。

清水牧場は栃木県北東部、那須野が原扇状地南端旧湯津上村で那珂川、箒側、蛇尾川に囲まれた田園地帯のロケーションにあります。和牛繁殖、肥育農家含め25戸があり畜産が盛んな地域です。

清水牧場の飼養頭数は現在育成含め42頭毎年7~8頭を更新している。昭和40年、学校を卒業した当初は稲作ときゅうり、トマト、ネギ、ゴボウ、ピーマン等露地野菜中心の経営でしたが“冬”のない牛飼いを昭和45年頃~徐々に開始し平成2年~牛舎新築を境に増頭し22頭規模となりました。規模拡大は県内では塩谷町の神長恒夫牧場に次いで2番目となります。

また清水さんはET牛生産でも有名です。ET事業も国の補助金関係もあり平成13年をピークに腹を貸す酪農家個数減少とともに減少した時期もありましたがその後の努力で盛り返してきた状況です。

飼養管理に関して生後~3.5か月離乳母子分離→パドックで群管理→約9か月~10か月出荷

清水さんのルーティーンは写真のように出荷2ヶ月~3か月前から1日1回15:00~30分かけてブラッシングし手入れをすることです。毎日行っているので牛から寄ってきます。また顔、鬣(背)、肘前端の毛刈り、尻尾は細く尻は大きく見せることがポイントで出荷2週間前には自ら削蹄し出荷するそうです。

写真は角がよく映っていませんが共進会に出品する牛は1週間ビニールテープを貼って成形し外すを3回繰り返しする。

体格の良い大きな母親しか大きな子牛を生まないし、ET子牛に関しても貸し腹酪農家の飼養管理技術や管理もその後の発育にも大きく影響するので重要である。生まれが大きな子牛は出荷時にも大きく育ち、中身も良くサシも良く入る牛になり肥育に行っても損させない牛になるという。

牛群の改良に関し近年はゲノミック評価を活用しているそうです。従来は親の推定育種価と生まれた子牛の体格体型と長年の“勘”を頼りに選抜していましたが技術の発達とともに評価出来なかった兄弟差もゲノミックでは評価できます。

話は少々逸れますがゲノミック活用に関しては乳牛がかなり先行しており生産形質(乳量、乳成分)、健康形質(生産寿命、娘牛繁殖能力、体細胞)、体型(体型、乳器、肢蹄、体重)にそれぞれ分けて総合評価されます。このゲノム解析を基に“サイアーアナリスト”なる職業の人が農場の改良目標を共有し遺伝的進捗度を加速させ経営を安定化させています。和牛においては枝重、ロース芯面積、バラ厚、皮下脂肪厚、歩留基準値、BMSの枝重と肉質に関してのみの評価しかありませんが近年問題になっている繁殖性についても肉質肉量向上より経済性を考えれば重要と考えています。事実乳牛ではそれまで年々低下していた繁殖性が米国においてゲノミック活用(DPR指数)により乳量を向上させながら急速に改善しています。和牛におけるゲノミック活用のこれからに期待しましょう。

話を元に戻して清水さんは長年の勘に加え、このゲノム情報を活用し解読することに成功し近日中に“日本一の牛”が出来る予定だそうです。交配技術やノウハウは清水さんに直接伺ってください。

まだまだブラックボックスの部分が大きいですが栃木県が得意とするET技術とゲノム解析活用により牛群改良は急加速するはずです。

最後に清水さんお忙しい中、取材に応じていただきありがとうございました。