とちぎの和牛を考える会

経済視点から牛飼いを考える/矢板市 福田英一牧場

今回は矢板市の福田英一牧場を取材しました。福田英一さんは会社員でしたが実家で牛飼いを継ぎ今年で就農23年目になります。元々は酪農でしたが平成26年に酪農から和牛繁殖に専従になりました。酪農メインでしたが今から33~34年前糸光 X 紋次郎(まこ号)からスタートし平成18年度生乳生産調整をきっかけにして10年かけて和牛繁殖雌牛を7頭から22~23頭増頭し30頭になったところで両親が高齢化したこともあり和牛に転換しました。写真は1枚目が道路側から撮影した牛舎で2,3枚目は牛舎裏側の裏山放牧場(パドック)になります。裏山に放牧して運動させているので分娩後の生殖器の回復が早く受胎が早まる傾向があるようです。

写真が福田英一さんです。牛舎やその他設備の配置も動線を考えて配置し少人数で管理できるよう工夫されています。酪農牛舎の時は繋いで飼っていましたが写真のように効率性からフリーバーンに改造して使用しています。堆肥舎等も和牛に合わせて周辺設備を整えました。現在は50頭の繁殖雌親牛がいます。繁殖効率を考慮し約10%の更新率で現状頭数を維持しています。血統については流行のものを選択し売れ筋の血統子牛を販売できるように努めていますが表題にも記載しましたが英一さんのこだわりは経済であり年間の“販売頭数”です。50頭の親牛から45頭の子牛を生ませ5頭を後継牛として残し40頭販売を目標にしているのです。勿論販売する牛1頭1頭が高価格であることが理想ですがそれよりも“販売頭数”にこだわっています。そのためには繁殖効率を高め年間で1頭でも多く分娩させることです。親牛の更新は基本的に年齢で決めています。12歳で10産したら廃用を決めています。AI回数もほとんどの牛が1回で受胎して年1産しています。また、せっかく生まれても出荷するまでに疾病等で死亡させてしまってはダメなので子牛の衛生管理もキッチリしてます。

写真は成牛舎斜向かいの育成舎(離乳後子牛舎)です。こちらも効率よく飼養できるように工夫され月齢ごとに子牛が管理されています。ウォーターカップにはヒーターが内蔵されています。これは冬場に去勢子牛が飲水量低下により尿が濃くなり“尿石症”を予防するためです。(松永先生のアドバイスによるもの)母子分離(離乳)は基本的に3ヶ月齢、分娩後2~3日成牛舎端で馴致させた後母子群飼、離乳後子牛舎に移動後群飼(5~6か月間)→出荷

子牛舎の裏手に広大な粗飼料畑があります。粗飼料畑は借地も含め9町あり、イタリアンライグラス9町X2回収穫、グリーンミレット6町X2回 その他田んぼで稲わら12町集めます。藁は約250本/年(品種:あさひのゆめ)写真の機械で藁やその他粗飼料(チモシーヘイ、オーツヘイ、ルーサンヘイ)を細かく切断混合し給与します。トラクター等の機械も減価償却が終わったものから更新し修理代のかからない比較的新しいものを使用しています。機械置き場も粗飼料畑に隣接し効率的になっています。

最後に今までにないほど飼料費を中心に燃料費、肥料代も高騰し生産コストが増大し農家経営を圧迫している状況が継続しており先が見えない状況です。この不況下で経営維持していくためには福田さんのように経済視点から飼養管理していくことではないかと感じました。